第二話おさらい
承認欲求で自己肯定感を高めていた私は、社会人となってから自分で自分を満たせずに、抗うつ状態となり休職に。
再就職し、自分に合った環境に恵まれるも、自分が過度に緊張してしまうことに悩みます。
その後、学生たちに講義をするという話をもらったことをきっかけに、緊張を抑えられる薬があるならと思いたち精神科を受診することを決意。
そこで、”社交不安症”と診断され、はじめての”抗うつ薬”を服用することになったのです。
処方された抗うつ薬
- パロキセチン…毎日継続して飲み続けることで徐々に血中濃度が上がっていき、セロトニンを増やして自律神経を整える薬。
- アルプラゾラム…緊張する前や不安に感じたときに飲むと、緊張や不安が抑えられる薬。
抗うつ薬のある生活の話
はじめての抗うつ薬への不安
抗うつ薬を飲み始めると決めたものの、薬局で薬が出るのを待っている間にも薬に対する不安が大きくなっていました。
薬を飲むこと自体に漠然とした不安を感じている私に、薬剤師さんがこんなことを言ってくれました。
「薬はめがねと一緒なんです。目が悪くてメガネが必要な人もいれば、メガネがなくても遠くまで見える人だっている。人それぞれなんですよ。」
「不安になったら飲めるように、お守りとして持っておくだけでもいいんですよ。」
この言葉に、とても安心させられました。
そしてこの抗うつ薬を飲む目的が、”大学での講義の時に緊張を抑えられるようにしたい”だったので、『とりあえず飲んでみて合わなかったらまたその時考えよう』というところにたどり着き、その日から服薬開始となりました。
体に合わないと副作用も強く感じる
薬を飲み始め、まず一番最初に感じた副作用が”頭痛”でした。おでこのあたりがぎゅーっと疼くのです。
その後、眠気とめまいと吐き気が混ざったような、”目がまわる感覚”も出てきました。
ぐるぐると目がまわり、低血糖の時のような血の気が引く感じがありました。
これが結構しんどく、朝起きてからしばらく体が動かせないまま吐き気が止まらないこともあり、病院へ連絡し再度受診することに。
薬が体に合っていないのかもしれないとのことで、パロキセチンからレクサプロという薬に変更することになりました。
セロトニンと腸の関係について
パロキセチンとレクサプロ、この2つの抗うつ薬は、どちらもセロトニンを増やす薬です。
ちなみに体内にあるセロトニンの90%は、腸にあるそうです。
なので、この抗うつ薬を飲んでいると、消化器官にも大きく影響が出るようです。
私も実際に、服用中は食欲が0.5〜1倍ほど増えました。
(これは周りに言われないと自分では気がつけませんでした。)
それから、胃もたれしてしまうのであまり好まない生クリームをたくさん食べても全く胃もたれがありませんでした。
抗うつ薬が太りやすくなると言われているのは、消化器官の動きを悪くするからなのだと身をもって実感しました。
薬を飲んでから”穏やかに過ごせるようになった”
頭痛、めまい、吐き気…などと副作用がたくさんある抗うつ薬ですが、抗うつ薬を飲んだことで、穏やかに生活できるようになったのは事実でした。
あれだけ悩んでいた息苦しさが全く無くなり、ずっと鬱陶しかったノイズが無くなったような感覚でした。
晴れやかな気持ちで過ごせるようになり、不安が原因でイライラしたり泣きそうになったりすることがなくなり冷静に自分を見れるようになりました。
緊張しても震えて焦ることがないため、色々な角度から意見を出すことができるようになり、視野も広くなったようでした。
そして迎えた大学講義
大学講義のために、毎日たくさんの時間を費やして準備して過ごしていきました。
この講義は、80人ほどの前で90分一人で話す、といったものでした。
今までこんな大人数の前で1時間以上も話したことはもちろんありませんでした。
毎日不安もありましたが、その不安のおかげで自分に向き合えたと思います。
時には睡眠を削ってやる日もありましたが、それがそこまで苦ではなく、むしろ手をつけなかった時ほど不安になりました。
『今頑張っていることが必ずつながる。』『私ならできる。大丈夫。』と、自分に声をかけながら準備期間を過ごしました。
そして迎えた大学講義、当日の朝。
授業の始まる1時間ほど前に、不安な時だけ飲む薬(アルプラゾラム)を飲みました。
この時、この薬を飲むのは3回目で、飲むと急激に何かが起こるというわけではないんだなと感じていたのですが、この時だけはやけに口が渇いたように感じました。
この口が渇きやすくなるというのは副作用で、『心臓の音緩やかだけど、緊張してるからなんだろうなあ』と感じていました。
その後、本番の講義中では、震えたり、息苦しくて話すのが止まるということもなく、無事にやり遂げることができました。
練習では想定していなかったことも本番中に起こったのですが、冷静に対応することができ、そんな自分に驚きながら時間が進んでいきました。
学生たちからは、「お話を聞いて、改めてやりがいのある仕事なのだと感じました。」「桃さんが言っていた子どもに寄り添うポイントを、保育の現場で大切にしていこうと思う」などと嬉しい感想をいただくことができました。
(
”寄り添うための3つのポイント”のブログは、この時の授業で話したことが書いてあります。)
そして何よりも、『自分でも誰かのためにできることがあった!』と感じらたことが嬉しかったです。
薬のおかげじゃない、準備していたからできたこと
この大学講義、もし全く準備をしていなかったらどうでしょうか。
薬があるから緊張はなかったかもしれません。
でも、焦りや後悔で自分を責めていたんじゃないかと思います。
そう考えてみると、今回講義がうまくできたのは薬のおかげではなくて、自分の準備がきちんとできたからなのかなと思うことができました。
薬があって当日に力を発揮できたのは間違いないのですが、それは全体のほんの一部なので、実際には私自身が積み重ねていたことを出し切ることができたのだと実感することができました。
本番で想定外のことが起こった時にも、冷静に対応できたのはきちんと準備をして何度も練習していたからなのではと感じます。
こう考えることにより、『もしかして、薬いらないかも?』と感じ始めます。
第三話まとめ・次回予告
初めての抗うつ薬服用、頭痛やめまい、吐き気といった副作用に悩まされるものの、飲み始めてから思考や体の症状がグッと軽くなりました。
そして迎えた大学講義では、想定外のことにも冷静に対応しつつ無事にやる遂げることができたのですが、『あれこれって、薬のおかげじゃなくって自分がちゃんと準備したからなんじゃ…?』と感じたのでした。
次回、抗うつ薬を飲んでいることで自分らしさも見失ってしまっていたことに気がつき、薬をやめることを決めます。しかしその後、薬をやめたことで起こる離脱症状に悩みます。
つづく
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